この春から二人、社員が入った。
他の店鋪からの移動ではなく、新入社員なので鈍器の仕事や変なお客さまに慣れるのはとても大変だと思う。
メイトからの昇格ならまだしも、鈍器どくとくの異様な雰囲気や、ありえないほどの忙しさゆえに要求されるスピーディかつ正しい優先順位。
もちろんこれはどんな仕事にも言える事で、社員で入ったからといってメイトより仕事が出来なくて当たり前。
必要なのは失敗から学んで、次に活かすこと。
…なのだが、二人とも新社会人というわけではなく、今までに会社勤めの経験もある大人なのだが、片方の男がなかなか仕事を覚えない。
それだけならまだ可愛い。妙にプライドが高く、メイトにバカにされてたまるか、社員だからメイトより鈍器のことを知っているのだと言わんばかりの態度をとるのだ。
先日の日曜日、毎週のことながら鈍器内は忙しく、みんなそれぞれの事業部で走り回って働いていた。
わたしは上がりの時間だったのだが、お客さまに商品の質問をされ、「担当を呼びますので少々お待ちください」と、上記の男を業務連絡で呼び出した。
その直後に、別件で呼び出されていたので、忙しそうだなぁと思っていたのだが、数分後わたしに声をかけたお客さまのいる売り場を通ると奴はまだ来ていない様子。
あとから聞くとわたしの後にかかった業務連絡の方の仕事をしに行っていたらしい。
慌てて別の社員にお客さまの対応をお願いした。
業務連絡の内要によって、時間がかかりそうな仕事とそうでない仕事を判断して、優先順位を逆にするのならまだわかるのだが、このときの判断ミスは火を見るよりも明らか。
自分が行けない場合は他のメイトなり社員に行ってもらうようにインカムで伝えればいいだけのこと。
そんな初歩的なミスを連発するのに、「俺は出来る人間」オーラを出されるからむかつくのである。
忙しくて頭の中はパニックなのはバレバレなのに、長州小力風に「慌ててないっすよ」とクールに装おうとするからメイトに嫌われるのである。
もう片方の社員はというと、人当たりも良いしキャラが周りを穏和にするので、嫌われたりはしない。どんなに忙しくても一人ひとりの接客を大事にしているのが端からみていても印象が良い。たまに一人の接客が長過ぎる時もあるが。
もちろん失敗はするがわからない事をそのままにせず、わかるまで聞いてくるのでぐんぐん成長していくのを日に日に感じるのだ。
少し前に、「仕事はめちゃくちゃ出来るけど接客態度が悪い人間と、仕事はあんまり出来ないけど接客態度が良い人間、客の立場だったらどっちがいい?」と母に質問したところ、母は後者だと言った。
もちろん客でも雇う側でも両方が出来る人間が理想なのだが、なにしろ天は二物を与えない。
わたしはどちらの方がいいかと考えると、その時の状況や気分によるので決め難い。
急いで買い物を済ませたいのにレジが遅くて笑顔で接客されても嬉しくない。
観察力も必要になってくる。
そんなことを言っていたら切りが無いのだが、正反対な人間二人の今後を今日もへらへらと高みの見物するわたしだった。